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【  2018年08月  】 

青葉の季節

その他

2018.08.31 (Fri)

  新緑瑞々しく、木々の若葉薫る季節だった。信はふとペンを動かす手を止め、窓の外に視線を転じた。甘くさわやかな香りが鼻腔をくすぐる。彼は胸いっぱいに大気を吸い込んだ。肺のすみずみまで〝春″というものがゆきわたったような気がした。 そのまましばらく草木の香りを楽しんでいた信に、不意に声がかかった。「おーい、信くーん!」「おーい」「こっちこっちー」 信を呼んでいたのは同級生たちだった。サッカーボール片手...全文を読む

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Parallel Lines 〝仲間″

その他

2018.08.31 (Fri)

  憤然と居住区へ向かって歩く信にやっとこさ追いついた一樹は、小走りをして上がった息を整えつつ、横に並んだ。ふたりはそのまま無言で廊下を突きあたると、居住区へとつながる扉を開けた。そして、右手のテレビなどがある休憩スペースのソファにドカッと腰かけると、同時に息をついた。この、番付上位の者のみが使用を許可された五階の憩いの場を使う権利を、一樹はつい最近の部屋替えで獲得していた。「ハァ~、久々に菊ちゃん...全文を読む

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Parallel Lines 共上げ

その他

2018.08.31 (Fri)

             ※R18 モブx章介 一樹x信(アッサリ) の絡みあり  どうやらウッカリ口を滑らせてしまったらしい章介から、一樹と信とかなり親しいことを聞いて、興味本位で一緒に上げようとしてくれたとんでもない客の名は和泉といった。一樹は自分たちに見せつけるようにして章介を後ろから抱きこみ、その腿のあたりをさすっている相手の品のなさに眉をひそめ、信と顔を見合わせた。同じように感じていたらし...全文を読む

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Parallel Lines  友のために

その他

2018.08.31 (Fri)

 「信、一樹、すまん!」 例のごとく集まった月曜日の昼食後、部屋にやってきた友人たちに開口一番そう言った章介は、自室の畳に手をつき、頭を下げた。信が呆気にとられてその場に立ち尽くしていると、章介はその広い背中をふたりに晒したまま続けた。「おれのミスで!……ふたりと同衾せねばならなくなった……!」 入口を背に並んで立っている信と一樹に、まるでそうすれば現実の酷さが和らぐとでも思っているかのように、章介は早...全文を読む

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桜咲くころ

その他

2018.08.17 (Fri)

  桜の花びらがはらはら舞って、きらびやかに飾り付けられた中庭を彩る。一樹は目を細めて少しそれらに見入ってから、もう昔のように情動が動かなくなったことに気付いていくらか動揺しつつ、目の前で執り行われている宴会に目を向けた。今日は、年に一度の花見の日だった。二週間近く前から入念に準備をして、満を持して開かれた宴は盛況だった。男妓や見習いたち、それに他の従業員たちが総出で普段お世話になっている上客たちを...全文を読む

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温泉に行こう! キラキラ

その他

2018.08.12 (Sun)

  翌朝、秀隆が起き出したのは十一時を過ぎたころだった。深酒をして部屋に戻ってきたのが昨夜十二時過ぎだと聞いているから、たっぷり十時間は睡眠をとったはずなのに、頭が重く、身体はだるく、まったく寝た気がしなかった。耳もとでドラを連打されているような強烈な頭痛と闘いつつふと窓の外を見やると、外界から隔絶された日本庭園を散策する人たちの姿が目に入った。整然と刈り込まれた木々のはざまの太鼓橋に差し掛かった彼...全文を読む

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温泉に行こう! ドロドロ

その他

2018.08.12 (Sun)

            ※R15 遠い山並みに夕陽が落ちつつあった。その世界を照らす橙色の光の中で友人の浴衣の帯を締めてやっていると、部屋の扉をノックする音がした。津田秀隆は、雪のように白い肌を外からの光に染めて窓辺に佇んでいた広尾綾人と顔を見合わせた。その瞬間、声がした。それは秀隆が最も憎み、厭う人物の声だった。「菊野ですが」「どうぞ。入っていーよ」 綾人が黙っている秀隆の代わりに答えると、戸が開いて...全文を読む

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団結すれば吉

その他

2018.08.06 (Mon)

  信はニコニコと自分の話を聞く相手に、内心ため息をついた。友人のひとりとおそろしいほど顔立ちが似ているこの三十そこそこの男――外資系会社の役員、らしい――は、名を小岩雅貴と言って、初期の頃からの馴染み客のひとりだった。彼は張り見世で信を指名してきて以来、必ず週二回は予約を入れるようになっていた。「―――それで……ウルフの〝意識の流れ″という技法がどのように読者心理に影響を及ぼすかについての本を読んでみたので...全文を読む

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