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【  2017年06月  】 

強奪 ※R15

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

   横川和海は、高校でワンフロアを借り切った、甲子園球場にほど近いホテルの一室の風呂場の出入り口付近に立って、こちらに背を向けてベッドに座る相手を見た。うつむきがちにじっとしている彼女――澤一樹――のようすに、やはり落ち込んでいるのだろうか、と思い、声をかけようとしたとき、その手元に本があるのに気が付いた。横川は気抜けして、まだ少し湿っている頭をガリガリと掻いた。 澤は今日、甲子園という大舞台で敗北を...全文を読む

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半身 2

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  焼けつくような痛みに、鈴木リオは眉根を寄せて息をついた。右膝とその周辺が熱をもったように疼く。 少し負荷をかけすぎたか、と器具から降りて床に座り込む。そして、無意識に膝をさすりながら、室内練習場を見渡した。 選手たちは野外に出払っていて、広大な練習場の中には自分ひとりしかいなかった。 鈴木は膝を抱えて座り、足の上に顎を載せて痛みが引くのを待った。 刻一刻と時を刻む時計の秒針が静かな部屋に響く。目...全文を読む

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温かいひと 【オリジナル版独自のスピンオフ】

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

 ※こちらは本編オリジナル版へとつながるスピンオフです。 片岡沙織は平凡な選手だった。肩の強さも、足の速さも、打率も、チームの平均くらいだった。野球にかける情熱もどうやら中くらいだった。 片岡は、特徴がないというのが自分の特徴だと思っていた。榛名玲や藤田メイといった先輩たちのおかげで、県の平均よりは確実に強くなったチーム春日の中で、片岡は完全に埋没していた。彼女は監督に声をかけられることもなく、また...全文を読む

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あとがき 2017.9.5 更新

栄徳高校女子野球部! 本編 (オリジナル版更新中)

2017.06.11 (Sun)

 <小説の「語り」の手法/キャラクター/世界観について> この小説(本編)では、視点がコロコロ変わります。いや、コロコロというよりもバタバタと言った方が正しい可能性があるほど、多くの人物によって語られます。これは、ヴァージニア・ウルフの「意識の流れ」から着想を得たもので、物語は、複数の視点から語られ、進行していきます。一人称は使われていませんが、一人称の語りと同様に、完全に当該人物の視点から語らせるよ...全文を読む

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封印

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  気がつくと自分の視線がいつもある人物に向いている、ということに榛名玲(はるなれい)が気付いたのはごく最近のことだった。野球でも、勉強でも、交友関係でも、常に前を歩かれて、ほとんど憎んでいるも同然の相手を、つい目で追ってしまうのはどういうわけなのか、できるだけ考えないようにしてみても、相手にどうしようもなく惹きつけられているということに、もはや疑いの余地はなかった。 クラスメイトと穏やかに何か話す様...全文を読む

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グラウンドの魔物

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

 ※試合で相手にけがをさせちゃった子の話。ちょっと重いです。  あと15メートル、10メートル、5メートル、1メートル……。まだ泥のついていないホームベースは驚くほど白く明るく輝いて、篠岡響を誘っていた。まるで踏み出す一歩がこれまでの倍にでもなったかのような、地面が足裏の下を高速ですべってゆくかのような錯覚が、篠岡に万能感を与えた。 彼女は体内に残留する全エネルギーを使って、その場所に向かって走った。...全文を読む

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ヒーロー 2

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  おれには耳障りな声がある。それは、甲高い声でも、大声でも、しゃがれた声でもない。 それは、ひとを中傷する声だ。そういうことを話す声は、たとえどんなに美しい声質であっても聞くに堪えないものだ。ひとの行動や、本質的な部分をあげつらうだけの、内容のない会話をする人間の行動原理が、おれは昔から理解できなかった。人生は短いのに、そんな不毛なことに時間をかける意味が見いだせなかった。 まあ、自分が言われる分...全文を読む

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投手の器 3

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  最初から、球を投げるのは大して好きではなかった。ただ速さとコントロールだけを求めて延々投球練習をするのには正直辟易した。周りの投手たちは、球速を1キロでも上げたい、とかいうようなことをよく話していたが、澤一樹は彼らに大して共感できなかった。唯一、球種を色々試してみるのだけは面白みを感じることができたが、それもそのうち飽きてしまった。 一番イヤだったのは、マウンドに立った時に背負わされるものの多さ...全文を読む

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投手の器 2

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

 「一体全体どういうことなのか話してもらおうか、おれが納得いく説明ができるまで帰さないからな」 練習終わりのグラウンドで、榛名玲は幼馴染み兼、チームメイトを詰問していた。すでにチームメイトのほとんどは引き上げており、校庭には榛名、澤一樹、それに中峰ゆきひという2年生の投手しかいなかった。季節はすでに秋へと向かっていたが、まだまだ残暑厳しい晩夏の夜のことだった。 中峰は、怒り心頭の榛名をなだめようと何...全文を読む

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投手の器 1

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  白球が音を立ててミットに収まる――榛名玲は、いつでもそのときの音が好きだったが、地鳴りのような歓声の中で聞こえるはずのないその音――幼馴染みが投げ込む音――の幻聴が聞こえてくるのは、あまり愉快な体験とはいえなかった。 マウンド上では友人が顔色も変えずに次々球を放っている。いつものように、まだランナーはひとりも出ていなかった。 今日は中総体の宮城県大会2回戦だった。榛名が在籍する市立春日中学校は、塩釜地...全文を読む

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ヒーロー 1

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  教室は喧騒にみちていた。今朝、教師に指示された、窓際、前から4番目の席で、澤一樹はのろのろと箸を取り出し、昼食の準備を始めていた。 見知らぬ土地の、見知らぬ学校の、見知らぬ教室と、見知らぬ人々は彼女に緊張感を与えた。誰からも見られている気がして落ち着かなかった。これからこの場で、転校生としてどのように振る舞っていくべきか考えながら牛乳パックにストローを挿したそのとき、目の前の机に影が落ちた。「よ...全文を読む

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半身1

栄徳高校女子野球部! スピンオフ (更新中)

2017.06.11 (Sun)

  初めて会った時から、どこか翳のある人だと思っていた。周りの大半は、彼女を“根性あるやつ”と評していたが、成田ちなつの見解は彼らとは少し異なっていた。 鈴木リオは確かに、不屈の精神を持っていたが、同時に、悲しげな、あるいは寂しげな、もはや手に入らなくなったものを永久に追い求めているかのような絶望したカオ――この世を倦んだような、何もかも諦めきったようなカオ――をすることがあって、そちらの表情の方が、より...全文を読む

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